オペラ・音楽劇研究会について+宝塚公演評120226(花組)
●こんばんは。私は往時宝塚評論本の編集同人および執筆などしていたのですが、そのころお世話になった方のご紹介のおかげでこのような研究会に参加するようになりました。
一応仮のポジションとして「ボランティア研究者」として所属しています。
…自分がやっているのは現状ときたま例会に参加することやイベント手伝いなどしかしていませんが、どこかで自分がやっている宝塚関係の知見と音楽シーンの知見を組み合わせながら、なにかまとめられればと祈念しています。編集や校正などでのお手伝いもできればと思っています。
世界各地の音楽劇に関する研究も志向されているそうなので、どなたか南米の音楽劇情勢に詳しい方、発表などされてみませんか?
(一応学問的アプローチという条件はつきますので、発表や質疑応答などは学会スタイルになると思います。もし気が向かれる方は私も準備や確認などでお手伝いさせていただきます)
2/25(土)に今年度最後の例会が行われ、オペラ歌手・米谷毅彦氏の活動歴やそこで得られた知見、さらに歌を拝聴する機会を得ました。
米谷氏は法学部ご出身後芸大の院に入られ、30歳過ぎて欧州で武者修行をされイタリア・ドイツのみならずイタリア語のオペラを原語で上演するようになった、激動期のルーマニアで第1バリトンを務められるなどの魅力的な経歴を有され、現在でも新国立劇場などで活躍されています。そのかたわら、岩手でオペラ文化を育成すべく、活動を展開されています。
時間のやりくりがつかず途中からしか伺えなかったのですが、実地の演奏家として、西洋文化、教会音楽とのかかわりであった衝撃や、「宗教が違ったとしても人類の根底に流れているはずの宗教心に基づいて表現をするようにしている」などの貴重なお話を拝聴できました。文化旅行の監修などもされているのですが、自分の行ったレストランなども案内しながら文化を体感するというテーマで、文化と土地の関係を重視されていることに特に感銘を受けました。
訳詩での公演は字幕使用よりはマシだが韻律おいう点で難しいとの話から、日本のポップスの話も出て、韻律がめちゃくちゃなケースが多い中「津軽海峡・冬景色」はほぼ完璧な韻律であるとのご見解も興味深かったです。
終了後の懇親会でも、さまざまな研究・活動フィールドを有されている方々と貴重な話をさせていただくことができました。
●2/26、「雪はよごれていた」に記された事件と同日という状況ですが、平和裏に宝塚花組公演を日比谷にて観劇しました。以下簡単な感想など。
芝居「復活」はけっこう古風な舞台づくり、くどい箇所やかったるい箇所もあるが、その要素のおかげで宝塚がやりがちな「宗教的自己犠牲に基づく主人公の行動を恋愛話のみに落とし込む」雰囲気ばかりに支配されなかった点もあるのでなんともいえず。革命活動家シモンソンのところをもっとダークな要素を入れてやれば、もっと主人公ネフリュードフの「宗教的自己犠牲」の特異な雰囲気の根拠が出たような気もするが、それは演出家が指示すべきであって愛音羽麗に要求するのは酷であろう(ちょっと屈折がなさすぎたのは事実だが)。一方革命家の女性パーブロアの花野じゅりあは革命家の女性の屈折と切れ味のテイストをきちっと出していて(ラストのシモンソンへの感情は不明だが)貢献度大。花野はショーでも第4景第10場の「マーメイド」のロケットシーンにて過激なまでの大人の色気でマーメイドSをやっていて今回大活躍。注目してきた自分としては嬉しい。
主役の蘭寿とむは忍耐役でも華やかさを失わずOK、悪友シェンボック役の壮一帆はだいぶ華やかさと持ち味を上乗せしてきた感じ、ファナーニン弁護士の華形ひかるは人情の潜ませ方の抑制とその見せ方がさすがの演技力。
それに加えてお伝えしたいのは、今回は娘役・女役が大活躍で、先ほど述べた花野のほかにもカチューシャ役の蘭乃はなのグレ場面の切れ(ただ正気に返るところとグレの間を演じる引き出しがもう1つあれば完璧なのだが)、アニエス・月野姫花のちょっとかすれ系の声の持ち味を最大限生かした自由な精神のべたつかない表現の巧みさ、ミッシィ・実咲凛音の清新さ(夏美ようと桜一花が固めているところではあったが。ちなみに桜一花は出番激少なし。ここ最近やりすぎ、との評価か)、主人公の姉のナターシャ・初姫さあやの「結婚は愛に基づいてするもので自己犠牲に基づいてするものではありません」といって平手打ちをする場面のコク、イワノーヴァナ伯母・京三紗の包容力の中にひそませた色気など、女性の役が数・ウエートとも多く、娘役マニアとして十分見ごたえがあった。
ショー「カノン」は、音楽的にはカノン風味は薄いものの、第4景までの演出のキレ味はさすが三木章雄のベテランの技(しかも彼の持ち味の押し切る感じも残っている)、いつも2回繰り返しそうなところを1回で次に行くなど時間つぶしのないよいショーだが、第5景はちょっと息切れ感。
しかし第3景での蘭寿・蘭乃コンビを筆頭とするアクロバチックな振りも含むダンスの切れ味は、ここ最近ではかなりの収穫。蘭乃のキレとスキル(スカートがはだけない)に特にびびる。また蘭寿加入後、全体に花組ダンスはそれなりに締まってきている。あとはこの組は歌が課題。
全般に爆発力はないが、かなり満足度の高い舞台(ただし観客が集中力が切れる時間帯があるのはやむなし)と目される。
…終了後は船橋「東魁楼 船橋駅前店」にて揚げやきそばを。かなりボリュームはあるがしつこくはない。
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