※このブログの更新がかなりイレギュラーになっている関係で、載せるべき情報を載せておらず申し訳ございませんでした。この間見てきたパフォーマンスについての戯言をざーっと並べます。
●トラヴィス東京公演…9年前ほど、岡山で試聴した「THE MAN WHO」に魅了され、その後数枚のアルバムを購入しているので、ファンとはいいうるほど好きなグループ。以前レストラン貸切パーティーした際に「THE MAN WHO」をかけてください、といったところ、担当の女性が「トラヴィス好きなんですね」とかなり乗り気になってくれたことを思い出す。リーズナブルなわりにワインリストなどもしっかりしていたその店は1年後なくなっていたが…。
東京国際フォーラムでなんでやるんだろう、と思っていたがラスト近く完全アコースティックの1曲が感動的で、「それでかー」と納得。全体にはチープな分逆にリリカルな味を出していたスカスカドラムが、妙に重たくなっていて残念。しかしそれ以外はかなりアマチュアっぽさを残しており、服装にもまったくこだわらない、ある意味フォルクローレ的感性でも十分楽しめる安全なライブでありサウンドであった。自分は多少かゆくなったが、「英国ロックの良心」といわれるゆえんは理解した。まあ知っている曲も一定数あったので楽しめた。ホール公演だったが極めてライブハウスっぽい雰囲気。ギターはいかにも英国ロック小僧というキャラでみどころがあった。
「THE MAN WHO」のような清冽な感じをまた見たいな、と思った。(このアルバムのボーナストラック、「BLUE FLUSHED EYES」はかなりかっこいい。1回ちゃんとTAKUYA&YOHSIOでコピーしたい)
終了後行った「AUXAMIS」(5220-4011)は、パワーリーマンが合コンに使いそうな雰囲気だが、料理を食べずワインバーとして使えば(というか本来はそういう店のはずだが)コストパフォーマンスはそれなりであった。バンドリーダーだったI氏と無意味に夜景を眺める。
●水中、それは苦しい(高円寺のライブハウス)…実は「あらびき団」にも出ているマイナーなりに名は売れているバンド。「安めぐみのテーマ」が有名。アンプリファイしたバイオリンのかっこよさと音圧のぎりぎりの調和が凄いグループ。今後の活動の参考にしたいと思い観に行く。作詞面ではかなり失語症の気があるが、情けない風のキャラでバンド活動を仕切るボーカルは存在感がある。社会人バンドの活動姿勢のひとつの手本となる(例:音圧ないし存在感でチンピラ系の若造になめられないようにする、など)。
開始前に「ニューバーグ」、ここはハンバーグ以外が旨い。終了後は「上島珈琲店」。
●ミック・テイラー(Billboard 東京)…ストーンズがもっとも破天荒だった70年代前半のリードギタリスト。この人の魅力は、すっぽ抜け気味のハイコード単音で独自のグルーブと旋律展開を決めてくるところなのだが、それが前半のみ発揮されていた。中盤おそらく演奏者の思い入れほど客が盛り上がらなかった「YOU GOTTA MOVE」あたりでスタミナが切れたが、あとは月並みなブルース風ギターであった。アンコールにもこたえず、客の一部から「だめだあいつ」とかいう声も出ていたが、自分にとってはナマであの旋律展開を見ることが出来たので一応満足であった。カジュアルシートは脇だが、案外見やすかった。案内時間に行けば並ばず入れるので接客もわずらわしくない。
開始前ミッドタウン初見参で「宮武讃岐製麺所」(5413-3800)で温ぶっかけと天2種+おにぎり2種。東京であることを考えればまあまあな水準だがボリューム少なし。つい尾張三和(6804-3029)で親子丼をはしご。さらに「ワイス・ワイス トゥールス」(5467-8355)でバーゲンのバッチャン焼きの醤油差しを買う。バッチャン焼きに陥入が入っているが色が萩焼風であった。
ミッドタウンは思ったよりはるかに小規模だが、空いていると社会見学には好適。ブティックとか高すぎだが。
●ポツドール「愛の嵐」(新宿)…世間ではポツドールの最高傑作のひとつ、らしい。作者の駆け引きが「激情」などに比べると目に付くが、そこが「まとまった世界再構築」を愛する芝居好きには堪えられなかったのだろう。自分にとっては「出だしの異常な音圧のユーロビート、前半の押さえつけられたような会話と動作、最後の何も残らない感は凄いが、中盤の破局後そのまま収束していくのが『激情』に劣る」という印象。あとすべての出演者がポツドールになるはずの舞台で、一人独自空間を作ってしまっていた江本純子はすごいな、と素直に思う。
またポツドール作品を見ている際にある「耳をふさぎたくなるほど自分の内面をえぐられる」感じが、他の作品に比べても薄かった。場所と日時を単一に設定しているから、きっとフィクション感が強いのであろう。客で怒り狂っているような人がいないのも「らしくないな」と思ってしまう。ポツドールは見世物小屋感、およびそれを喜んで見ている客の罪悪感があってなんぼの世界ではなかろうか。
●この春は「ハロープロジェクト強化旬間」だったようで、モーニング娘。、Berryz工房、℃-uteの単独公演をそれぞれ先導者に連れられて観に行った。
モーニング娘。はパフォーマンスが一番安定していたが、新鮮味というか爽快感をもう少し追求することがアイドルとして必要なのでは、と感じた。一番意外だったのが、亀井絵里のトークセンス。「YOU,踊っちゃいなよ」とかジャニーな口調でいうMCに、一般人的素直な感性を感じて不覚にも笑ってしまった。
Berryz工房は客席、および会場の雰囲気が一番えぐかった。ぶつぶつ言いながらあらぬ方向を向いてナマ写真を持って歩いている人が会場前に複数いて、「華氏451」を唐突に思い出した。パフォーマンス自体はボイスパーカッションを取り入れるなど意欲的かつアイドル歌謡で聞きやすい要素もあるが、メンバーおよびそのファンの仲がよいのかどうか、小芝居のえぐみに不安を覚えた。
℃-uteは一番客が若く、公演中にずいぶん足を踏まれたし、3グループの中でも一番打ち込みシンセの音圧が厳しい曲が多いが、かつてのSPEEDを連想させるファッションやボーイッシュな激しい動き、ほのかなヒップホップ風味もあってか女性ファンが多く、アイドルグループとしては一番アッパーな雰囲気があった。
今後観に行くことになるのかどうか不明だが、これだけ知っていれば一般社会的にはハロヲタと言われるのであろう。とりあえずは、「これだけの若い女性が(一般知名度的には)むくわれなくてもパフォーマンス頑張っているのに、オヤジケーナ奏者がたとえむくわれなかろうが手を抜いていい理由がない」という励みにしたいと思う。
●宝塚月組バウ公演「二人の貴公子」…まず思ったのが「シェイクスピア系の芝居を宝塚で観るのはかなりアリ」ということである。シェイクスピア系の台詞の連打を通常の、あまりかっこよくない生活感のある俳優が出ている舞台でみると、そうとう上手い芝居をするカンパニーでも退屈感が生じてくるのは必然だと思う。所詮多くの観劇者にとってシェイクスピア的雰囲気(しかも日本語訳されたもの)はインストールしずらいOSであると思う。
しかし宝塚だと、それなりに見栄えに気を遣った役者が基本一生懸命やるため、フィクションとして徹底してみることができるため、物語の骨格に気付く可能性が向上するということに改めて気付いた。どうせ古典として血肉とするのが難しいなら、フィクションとして消費したほうが得であろう。宝塚だとかなりしくじっても「高級な文化祭芝居」の水準には到達するのだから。
さてこの芝居は、文化祭芝居要素が強いのは否めないが、観ていて損ではない水準だったように思われる。第1幕第1場のもこもこしたテーバイの野戦場は意味不明にどたばただったが、他の場面は(「森の中」などのように)ださくとも意味がしっかりしている。演出の小柳奈穂子があまり余計なことをしなかったことをまずは喜ぶべき。ただこの演出家が、今後「高級な文化祭芝居」以上のことを宝塚でなしえるのかどうかは、この作品では評価できない。期待もできない。
出演者では、龍真咲と明日海りおのWトップな雰囲気。龍よりも明日海のほうが歌は安定、身のこなしもしゃきっとしている。しかし龍には立ったときのスターオーラが明日海よりも強くあり、当面はこの2枚を競争させることが必要でないかと思われる。明日海のもつ両性具有な雰囲気を、ギリシャ神話的空間で上手く使えると宝塚は現在弱めの持ちネタの増強を図れるかもしれない。
羽桜しずくは、このメンバー、文化祭的要素のある内容では頭一つ抜けたヒロイン。ちゃんと姫に見える。あとはこれを大劇場などで持続できるだけの舞台人としての体力養成が課題では。
萬あきらが結婚する王でいつもより若い雰囲気で珍しいものを観る感あったが、磯野千尋の老練の重臣役、牢番の研ルイスは不足なし。研はもう少し重い役でもよいのでは。天野ほたるが、ツンケンした芝居だけで人物造型しようとしていたが、もう少しデモーニッシュな感じがほしかった。意外と難役の蘭乃はなは、無心にやっていてそれなりだったが、惜しむらくは牢番の娘が神託を告げる場面が小芝居になっていた。超若手では旅の騎士を演じた紫門ゆりやが、意外と台詞がちゃんとしていて高評価。
第2部第6場の牢獄で、部屋の仕切りを光で見せるなどの、手際のいい舞台効果もあった。
ラストや最後の挨拶のかなりのグダグダぶりを引いても、「まあいい見もの」であったとはいえる。ここに出た出演者の若手が少しでも芝居が上手くなることを念じたい。
●宝塚月組ドラマシティ「SAUDADE」…瀬奈じゅんワンマンステージ、かと思いきや多くの出演者に出番がある。特に第2部の芝居は、どうみてもかつての荻田作品「アルバトロス、南へ」へのオマージュ満載作品なのだが、多くの人物がいるふりをして朝海ひかるにイメージを収斂させていた前者と違い共演者にそれぞれのキャラを立て切る芝居を要求している。自分が見たときは越乃リュウ以外はそれが達成できているようには見えず、残念。個人的に期待していた憧花ゆりのは、もう少し図書委員好きを萌えさせるようなストイックな振る舞いが欲しかった。他の場面の振り付けも、第1幕第4場や第2幕第3場のように死ぬほどダサい感があり残念。後者は出だしは最高、なのだが歌が始まってからの振り付けが悶絶。自分の嫌いなタイプのANJUのせせこましい身振りが炸裂していた。
しかし瀬奈の男っぷりは凄いものがあった。ここまでの大トップになるとは、正直想像していなかった。何が凄いというわけではないが宝塚男役として凄いという事実が凄いと思われる。
●宝塚星組「My dear New Orleans」…安蘭けいサヨナラでチケット入手難、なんとか潜り込んだ公演。サヨナラ公演に一流の脚本なし、と勝手に思っているが、今回の公演は配慮やしかけはしっかりしている。ただし周辺人物の設定に微妙に言い訳がつきまとうのと、説明的な台詞のせいで感情移入しきれないように思われたのが残念。植田景子の悪い癖(良心的であろうとするが故の)と思う。このクラスのトップには、もう少しフリーハンドに解釈をゆだねる乱暴な脚本のほうが醍醐味が出るのかもしれない。しかし安蘭の黒人を従えて踊る場面などに、「洗練されきれないが情熱や存在感がある」宝塚男役のかつての美質が出ていて、非常に卒業を惜しんだ。チンピラや悪役にはキレがある柚希礼音でこの空間は埋まるのだろうか。
今回の公演で妙に思ったこととしては、舞台装置で写真の使用率を今以上に上げるのを辞めて欲しい。宝塚は、世界トップレベルの舞台装置制作が出来るのだから、モノのもつ説得力をもう少し信じてほしい。あとサヨナラショーではやるそうだが、「ポゴシプタ」をショーで聞きたかった。
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